組織とは何か? 人によって判断が変わる職場で立ち返りたい原点

管理職が忘れがちな、当たり前だけれど大切なこと 第1話

「あの人の依頼は通るのに、別の人が頼むと断られる」「昨日までの方針が、社長の一言で変わってしまった」。
そのたびに調整に追われ、部下から理由を聞かれても、うまく説明できない。管理職として、そんなやりきれなさを感じることはないでしょうか。

経営者の側にも、「全体を考えて判断したつもりなのに、現場に伝わらない」というもどかしさがあるかもしれません。

目の前の仕事を進めるだけでも精いっぱいのとき、組織の目的まで考える余裕は持ちにくいものです。それでも、判断に迷う場面でこそ、「そもそも、この組織は何のためにあるのか」と、一度立ち返ってみていただきたいのです。

目次

その判断は何を実現するためのものでしょうか

私は、組織を考える出発点は、共通の目的に向かって人が役割を分担し、協力することにあると考えています。
ここでは、日々の仕事を判断するための実務的な捉え方としてお伝えします。

会社であれば、顧客に価値を届け、利益を確保し、事業を続けていく。
そのために、営業も現場も管理部門も、それぞれの役割を担っています。

ところが、日々の調整では「誰の要望か」「誰が強く主張したか」が、いつの間にか判断の決め手になることがあります。
そうなると、組織全体として何を優先するかが見えにくくなります。

目の前の依頼を受けるか断るか。
その前に、「この判断は、会社として実現したいことにつながっているか」と問い直す。
この一呼吸が、問題の見え方を変える手がかりになります。

経験豊かな社員の判断が慣習になるとき

たとえば、ある職場で、実績のある営業担当者の短納期の依頼が、いつも優先されているとします。
若手から同じ依頼が来ると、「もっと早く相談して」と断られる。
現場の管理職は、ベテランには言いにくいと感じ、何とか調整を続けています。

そのやり方で仕事が回ってきたのには、事情があるでしょう。
その社員の経験や顧客との関係が、会社を支えてきたのかもしれません。
ただ、例外が積み重なると、誰も説明できない不公平感や、現場の無理が残ることがあります。

ここで確かめたいのは、依頼した人の立場に加えて、顧客への影響、納期変更の必要性、他の案件や品質への影響です。重要顧客への対応で例外が必要なら、その理由と、誰が何を調整するかを明らかにします。

判断を変える事情があるなら、その事情を説明する。
理由が「その人だから」だけになっていないかを確かめることが、組織としての判断を取り戻す一歩になります。

公平さは全員に同じ結論を出すこととは限りません

公平に判断しようとしても、案件の緊急性やリスクが違えば、結論が異なることはあります。
大切なのは、共通の基準で事実を確かめ、異なる対応をする場合には、その違いに合理的な理由があることです。

透明性についても、個人情報や取引上の秘密まで全員に公開することを意味しません。
関係する人に、必要な範囲で判断の基準と理由を説明できることが大切です。

社員の意見を聞くことと、会社として判断することは、両立できます。
「希望は分かった。そのうえで今回は、この目的と条件からこう判断した」と伝えられるか。
そこに、管理職の役割が表れます。

社長の判断にも目的を確かめる対話から近づく

「理屈は分かるけれど、社長の判断には口を出せない」。そう感じる方もいると思います。
いきなり慣習の是非を争うより、まずは判断の背景を確かめるところから始めてみてください。

「今回は何を優先した判断でしょうか。
現場にも同じ方向で説明したいので、理由を確認させてください」。
こう尋ねることで、経営者が考えていた事情を共有できることもあります。

そのうえで「この納期を優先すると、別のお客様への対応が遅れます。
どちらを優先するか確認したいです」と、影響と選択肢を示します。
自分の権限で変えられない問題を、一人で抱え込む必要はありません。

経営者の方にも、判断を変えた際は、その理由を一言添えていただきたいと思います。
現場が振り回される感覚を減らし、方針に沿って考える材料を渡すことにつながります。

まず最近の判断を一つ振り返ってみませんか

「なぜこうなったのだろう」と引っかかっている判断を一つ、思い浮かべてください。
その判断は何のためで、何を根拠にし、影響を受ける人にどう説明できるでしょうか。

うまく説明できない部分があれば、そこが確認の出発点です。
誰かの判断を否定するためではなく、次から同じ問題にどう対応するかを話し合う材料にしてください。

人は、納得できないことが続くと、協力したい気持ちを持ちにくくなります。
「人の心」と、目的・役割・判断基準という「組織の仕組み」は、ここでつながっています。
組織とは何かを考えることは、目の前の困りごとを、筋道立てて考え直すための土台なのです。

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組織マネジメントの基本 全4話

  • この記事:第1話 組織とは何か? 人によって判断が変わる職場で立ち返りたい原点
  • 第2話 部下への指示に迷ったら 雇用契約から考える管理職の判断基準
  • 第3話 注意してもミスが減らない 管理職が考え直したい管理の本来の役割
  • 第4話 責任ばかりで権限がない職場へ 仕事を任せる前に考えたいこと

執筆:メンタルプログレス代表 山口幹生/組織マネジメント強化アドバイザー

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この記事を書いた人

職場や生活で強い不安やストレスを抱えてお悩みのあなたを、企業経験30年(人事労務を担当した15年ではメンタル不調者への産業医と連携した対応経験が豊富)、メンタルクリニックでの患者さんへのカウンセリングによる支援、社外メンターとしての成長支援、SNS相談員として命と心、LGBTQなどの相談対応などの経験をベースにサポートいたします。

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