目次
- 不安や緊張が消えないのは、あなたのせいじゃない
- 闘争・逃走反応──太古の脳があなたを守ろうとしている
- 思考のクセが不安を呼び、緊張を慢性化させる
- CBT(認知行動療法)はなぜ効くのか?
- 神経可塑性と長期増強──脳は練習すれば変わる
- カウンセリングで「前向きな脳」を育てるという選択肢
- 参考文献・学術的根拠(信頼のために)
1. 不安や緊張が消えないのは、あなたのせいじゃない
「こんなことで不安になる自分が嫌だ」「人前で緊張してしまうのは弱いから?」
そう感じている方が多いですが、それは“あなたが弱いから”ではなく、“脳ががんばりすぎている”からかもしれません。
2. 闘争・逃走反応──太古の脳があなたを守ろうとしている
人間の脳には、進化の初期段階から備わっている「闘争・逃走反応(fight or flight response)」という生存本能があります。
これは何百万年も前、猛獣や自然災害など命に関わる脅威がすぐそばにあった時代に、瞬時に危険を察知し、身を守るために発達した機能です。扁桃体が危険を察知し、交感神経を活性化、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが体に“逃げる準備”をさせます。
現代では猛獣に追われることはありませんが、職場での叱責や対人関係のストレス、過去のトラウマ記憶などが、脳にとっては“同じような脅威”として認識され、反応を引き起こしてしまうのです。

3. 思考のクセが不安を呼び、緊張を慢性化させる
不安を感じる背景には、「自動思考」と呼ばれる無意識の思考のクセがあります。
「また失敗するに違いない」「どうせ嫌われる」など、現実よりも危険を大きく見積もるような思考が、脳の“危険スイッチ”をずっとオンにしてしまうのです。
これが交感神経の過剰な活性化や、コルチゾールの慢性的分泌につながり、心も体も休まらなくなってしまいます。
4. 認知行動療法(CBT)はなぜ効くのか?
CBTは、このような自動思考に気づき、それを書き換えることで不安感情を改善することを目的とした心理的アプローチです。
「本当にそうだろうか?」「別の可能性はないか?」と問い直すことで、思考と感情のつながりを緩め、緊張を和らげることができます。
CBTはただのポジティブ思考の練習ではなく、脳の反応パターンそのものを変えていくための“科学的トレーニング”です。
5. 神経可塑性と長期増強──脳は練習すれば変わる
脳は、大人になってからでも変化します。
それを支えているのが、「神経可塑性(neuroplasticity)」と「長期増強(long-term potentiation:LTP)」という仕組みです。
■ 神経可塑性:変化は元に戻らない“脳のリフォーム”
神経可塑性とは、脳の神経細胞(ニューロン)同士のつながり方が、経験や学習によって再編される能力のこと。
CBTで「もうその不安は過剰に考えすぎなくても大丈夫」と繰り返し経験することで、脳の中に新しい回路ができていきます。
そして一度できたこの回路は、ピアノや自転車と同じように“元には戻らない”のです。

■ 長期増強:反復で“ポジティブ思考”は上手になる
長期増強とは、同じ神経経路を繰り返し使うことで、シナプス伝達の強さが長期的に増す現象です。
これまでネガティブ思考を繰り返してきた脳には、その思考が「上手に」なってしまっている状態。
でも、ポジティブ思考も同じ。CBTによって「練習」すれば、ポジティブな考え方も自然に上手にできるようになります。
脳は、あなたの味方になってくれるのです。

🔍補足:神経可塑性の概念はKandelら(2012)により広まり、LTPはBliss & Lømo(1973)によって実証されました。これらはCBTの神経科学的な裏付けともなっています。
6. カウンセリングで「前向きな脳」を育てるという選択肢
「考え方を変える」ということは、単なる気分転換ではなく、脳の仕組みに働きかける“根本的なアプローチ”です。
心理カウンセリングでは、あなたが安心できる環境の中で、自動思考を見つめ直し、安全で前向きな思考の回路を育てていきます。
繰り返すことで、あなたの脳が“前向きな反応”を自然に選ぶようになっていく──その第一歩を、一緒に始めてみませんか?
7. 参考文献・学術的根拠
- Kandel, E. R. et al. (2012). Principles of Neural Science. 5th ed.
- Beck, A. T. et al. (1979). Cognitive Therapy of Depression.
- LeDoux, J. (2002). The Emotional Brain.
- Bliss, T. V. P., & Lømo, T. (1973). Long-lasting potentiation of synaptic transmission in the dentate area of the anaesthetized rabbit following stimulation of the perforant path. Journal of Physiology, 232(2), 331–356.
※著作権を尊重し、本文中では内容の解釈・要約のみを掲載しています。

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