勇気の作り方 ― 不安や恐怖を乗り越えて行動できるスキル(行動療法)

目次

勇気とは何か?

「勇気」とは、生まれつき備わっている特別な資質ではありません。

勇気を辞書で引いてみると

「物事を恐れない強い心」

と出てきます・・・

果たしてそうでしょうか?
物事を恐れるから勇気があるのだと思うのですが・・・
そもそも物事を恐れる心がなければ、危険を危険と感じないのだから、真正面から危険と遭遇する確率が上がるので、圧倒的に生存確率が下がってしまいます。

そんな「勇気」を生存本能が許すはずはありません!

だから、勇気とは

「目的を達成するために物事を恐れる気持ちを受け止めて行動できる強い心」

と定義した方が現実的ではありませんか?

心理学的にも、恐怖をゼロにすることが勇気ではなく、恐怖を抱えたまま前に進むことが「勇気」とされています(Rachman, 1984)。


行動療法が勇気を育てる

不安や恐怖を克服する最も効果的な方法のひとつが、行動療法(特に暴露療法)です。
暴露療法とは、不安や恐怖を感じる状況にあえて身を置き、その感情が自然に収まっていくのを体験する方法です。

例えばカラオケ。
カラオケは、人前で歌ったりすることが恥ずかしくて恐怖を感じることから、カラオケから逃げ回っていた人でも、無理やりにでも歌わされているうちに、人前で羽炊くことに慣れてきて、歌が上手くなり、楽しくなってしまいます。
これを意識的に実践するのが行動療法です。

実際、暴露療法は恐怖症やPTSD、社交不安障害など幅広い不安障害に有効であることが多数の研究で確認されています(Craske et al., 2008, Lancet Psychiatry)。


脳の仕組みからみる暴露療法の効果

暴露療法が効く理由は、脳の学習メカニズムにあります。

  • 恐怖は脳の扁桃体が「危険」と判断したときに強く働きます。
  • しかし、実際には危険でない状況を繰り返し体験すると、脳は「安全だ」と再学習していきます。
  • このプロセスは消去学習(extinction learning)と呼ばれ、前頭前野と海馬の働きが関与することが知られています(Milad & Quirk, 2012, Neuron)。

つまり、脳は「恐怖を感じたが無事だった」という経験を積むことで、恐怖を弱めることができるのです。


成功例:ベトナム戦争帰還兵とPTSD

ベトナム戦争から帰還した兵士の多くが、戦闘体験からPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えていました。
アメリカの精神科医たちは、そうした帰還兵に対して暴露療法や認知行動療法を試み、その有効性を報告しています。

例えば、精神科医エドナ・フォア(Edna Foa)らの報告では、銃撃戦の記憶に苦しみ、爆竹の音でパニックになってしまう帰還兵が、段階的に暴露療法を受けることで「危険は去った」と脳が再学習し、生活を取り戻していったケースが紹介されています(Foa, Hembree & Rothbaum, 2007)。

治療の過程では、

  • 治療者のサポートを受けながら安全な環境で記憶を語る
  • 恐怖を呼び起こす映像や音に段階的に触れる
  • 「自分は今は安全だ」という新しい捉え方を育てる

といったプロセスを経て、恐怖反応が和らいでいきました。数か月の治療を通じ、彼は再び家族と出かけ、眠れる夜を取り戻すことができたのです。

行動療法には注意点もある

ただし、こうした治療には専門家の伴走が不可欠です。
PTSDのように強烈な外傷体験に基づく恐怖は、自己流で暴露を行うとフラッシュバックが悪化する危険もあります。

フォアらの研究でも、「安全な環境と専門家の支援があって初めて効果を発揮する」ことが強調されています。
(参考:Foa, E.B., Hembree, E.A., & Rothbaum, B.O. Prolonged Exposure Therapy for PTSD: Emotional Processing of Traumatic Experiences. Oxford University Press, 2007.)

もし、何かのきっかけで強い恐怖感情に囚われ、生活に支障をきたすようであれば、専門の医師に相談することをお勧めします。
その上でカウンセリングが必要だと思えば、まずはメンタルプログレスの無料のお試しカウンセリングをお気軽にお申し込みください。
無理にお申し込みに誘導することは致しませんので、ご安心してお申し込みください。


不安や恐怖のピークは行動直前に訪れる

心理学的に、不安や恐怖は行動を起こす直前がピークであり、その後は自然に下がっていきます。

「不安が消えてから行動する」のではなく、「不安を抱えたまま一歩踏み出す」ことが重要です。
これは多くの臨床研究で確認されており(Barlow, 2002, Anxiety and Its Disorders)、行動そのものが治療効果を持つのです。


森田療法の「恐怖突入」

日本で発展した森田療法でも、「恐怖突入」という考え方が提唱されています。
「怖い、でもやる」という態度は、行動療法と同じく、不安に支配されない生き方を可能にします。

これは現代の認知行動療法と共鳴しており、恐怖を消そうとせず、そのまま行動に結びつける実践的な智慧です。


不安を克服するために、葛藤をどう処理するか?

不安や恐怖を前にしたときの葛藤を処理するためのヒント:

苦手なことをやらねばならない時、例えば人前でスピーチするなど、多くの人が躊躇してしまいますよね。
そんな時、話さなければならない、でも、人前話す恐怖や失敗したらどうしようという不安から、できれば人前で話すことを回避したい・・・と葛藤することが多いのではないでしょうか?

そんな時、人前で話さなくても良い理由を考えて、話さないことを選択しようと自分自身を説得してしまうことってあると思います。そんな時に恐怖を克服し、人前で話すために葛藤の処理をするためのヒントです。

  1. 不安を消そうとしない
    → 消そうとすると強まります。「不安があってもいい」と受け止める。
  2. 目的を思い出す
    → 「なぜこれをやるのか?」を意識すると、恐怖より目的が前に出ます。
  3. 小さな一歩を実行する
    → 完璧を目指さず、段階的に進むことで勇気は育ちます。

まとめ ― 勇気は「行動」から育つ

勇気とは「恐怖を感じない心」ではなく、「恐怖を感じながらも行動できる心」です。

  • 脳は行動を通じて恐怖を弱める学習をする
  • 暴露療法や認知行動療法はその仕組みを応用した方法
  • 森田療法の「恐怖突入」も同じ考えに基づいている

勇気は生まれつきのものではなく、行動を重ねることで育てられるスキルなのです。


参考文献(読者向けに整理)

  • Craske, M.G. et al. (2008). Optimizing exposure therapy for anxiety disorders. Lancet Psychiatry.
  • Milad, M.R. & Quirk, G.J. (2012). Fear extinction as a model for translational neuroscience. Neuron.
  • Foa, E.B., Hembree, E.A., & Rothbaum, B.O. (2007). Prolonged Exposure Therapy for PTSD: Emotional Processing of Traumatic Experiences. Oxford University Press.
  • Barlow, D.H. (2002). Anxiety and Its Disorders: The Nature and Treatment of Anxiety and Panic.
  • 森田正馬(原著)、北西憲二(監修)『森田療法』白揚社

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。

よかったらシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

職場や生活で強い不安やストレスを抱えてお悩みのあなたを、企業経験30年(人事労務を担当した15年ではメンタル不調者への産業医と連携した対応経験が豊富)、メンタルクリニックでの患者さんへのカウンセリングによる支援、社外メンターとしての成長支援、SNS相談員として命と心、LGBTQなどの相談対応などの経験をベースにサポートいたします。

コメント

コメントする

目次