自己主張が強すぎるかもしれないあなたへ──アサーションで、コミュニケーションの不安を自信に変える

いつも真面目に、誰よりも真剣に仕事に取り組んでいる。
組織やチームのことを考えているからこそ、間違いを指摘し、正しい方向へ進めたい。

それなのに、なぜか人間関係がうまくいかない。
会議で発言すると、周りの空気が重くなる。
部下や同僚が、少し距離を取るようになった気がする。

もし、そんな感覚に心当たりがあるなら、
あなたは今、不安や生きづらさを感じていないでしょうか。

「自己主張が強すぎる」と誰かに言われたことがあるかもしれません。
しかしそれは、あなたの責任感や真面目さが、伝え方と結びついていないだけなのかもしれません。

実は、その「伝わらない苦しさ」は、
あなたが抱える不安や、
「正しくなければならない」「失敗してはいけない」という強い使命感と、
深く関わっていることがあります。

その不安が、知らず知らずのうちに
言葉を「正論」や「完璧さ」を求めすぎた、強い表現にしてしまうのです。

この記事は、あなたの真剣さを否定するものではありません。
その思いが、相手にきちんと届くようにするための
コミュニケーションの調整方法をお伝えしたい、
そんな思いから書いています。


目次

前回の記事とのつながり

アサーションは「不安」と「強さ」を扱う技術です

以前の記事
職場で自己主張できないあなたへ──アサーションで『自分らしさ』を取り戻す方法
では、「言いたいことを飲み込んでしまう苦しさ」を扱いました。

しかしアサーションは、その反対側──
言えているつもりなのに、関係がこじれてしまう人にとっても、
同じくらい大切なコミュニケーションスキルです。

不安や生きづらさを抱える真面目な人ほど、

  • 声を出せない(勇気の不足)
  • 声が強くなりすぎる(調整の不足)

このどちらかに偏りがちです。

アサーションは、
人と人が前向きな妥協点を見つけるための
“真ん中の技術”

不安な自分を守りながら、
周囲との関係性を良くしていくための知恵なのです。


「自己主張の強さ」は、あなたの価値です

まず大切なことをお伝えします。

自己主張の根底にあるものは、あなたの価値です。
責任感が強い。
正しさを大切にしている。
仕事に本気で向き合っている。

こうした資質があるからこそ、
あなたは強く自己主張しようとします。

問題は、「強さ」そのものではありません。
その強さが、相手の不安を刺激し、意図とは違う形で届いていることなのです。


サラリーマン社会でよくある場面①

会議で正論を伝えたはずなのに…

ある会議で、新しい提案が出たとき。
あなたは、無駄を避けたい一心で、こう指摘したかもしれません。

「それ、前提が甘いですよね」
「現実的じゃないと思います」

あなたの内側には、
「会議を建設的にしたい」
「無駄な議論を避けたい」
という真剣な思いがあります。

ところが、言われた側の内側では──

  • 「そんなに否定されるとは思わなかった」
  • 「ここで言い返したら、さらに詰められそう」
  • 「もう発言しない方がいいかも」

といった萎縮や不安が、静かに起きています。

その場では黙るかもしれません。
しかしそれは、納得ではなく、
「これ以上傷つきたくない」という思考が止まった状態です。

次からその人は発言しなくなり、
会議は少しずつ「安全な場」ではなくなっていきます。


「黙った=理解した」ではありません

強い言葉や論理的な正論を向けられたとき、
人の脳は一時的に「身を守るモード」に切り替わります。

驚き、戸惑い、萎縮。
その結果、

  • 言葉が出ない
  • とりあえず黙る

という反応が起きます。

沈黙は、同意のサインではありません。
考える余地を失ったサインであることが多いのです。

これは、あなたが抱える
「失敗してはいけない」という不安と同じように、
相手が「否定される不安」を感じている状態でもあります。


アサーションの目的を、ここで再確認しましょう

アサーションの目的は、
「自分の主張を通すこと」ではありません。

相互の人間性を尊重し、
気持ちや考えを傾聴し合いながら、
前向きな妥協点を導き出すためのコミュニケーション。

これが、アサーションの本質です。

あなたの正しさと、関係性を、同時に扱う。
そのための“型”が、アサーションです。


サラリーマン社会でよくある場面②

部下が言い返してこない理由

部下や後輩に対して、
あなたはこう問いかけているかもしれません。

「普通はこう考えるよね?」
「なんでこのやり方になるの?」

上司側の内側には、
「成長してほしい」
「同じミスを繰り返してほしくない」
という責任感と愛情があります。

一方、部下の内側では──

  • 「責められている気がする」
  • 「説明しても否定されそう」
  • 「評価を下げたくない」

という恐れが動いています。

その結果、部下は
本音を言わず、相談を避け、ミスを隠すようになります。

あなたは「反省している」と感じるかもしれません。
しかし実際は、萎縮しているだけなのです。


強すぎる主張を、アサーティブに変える視点

主張の内容を変える必要はありません。
変えるのは、順番と姿勢です。

不安からくる正論は、「指摘」から入りがちです。
アサーティブなコミュニケーションは、
次の順番を大切にします。

  1. 事実(客観的な事柄)
  2. 自分の気持ち・考え(Iメッセージ)
  3. 相手への配慮(理解しようとする姿勢)
  4. 提案・選択肢(建設的な問いかけ)

たとえば、


「それは違うと思います」


「私はこの点が少し気になっています。
あなたの考えを、もう少し聞かせてもらえますか?」

正しさを保ったまま、
相手が考え続けられる余地を残すことが、
不安を和らげ、関係性を築く鍵になります。


アサーションを支える「傾聴」の基本

自己主張が強い人ほど、
相手の話を聞きながら、無意識にこう考えがちです。

  • 「私はこう思う」
  • 「それは違う」
  • 「結論はこうだ」

この“頭の中の反論”を、いったん止めます。

傾聴のポイントは、とてもシンプルです。

  • 判断せず、評価せずに聴く
  • 思考を止め、相手の言葉に集中する
  • 二人称で受け取る

たとえば、

「あなたは、そう感じているのですね」
「あなたは、そう考えているのですね」

と、相手の言葉をそのまま受け取ります。

途中で遮らず、最後まで聴ききる
沈黙の時間を、怖がらない。

傾聴とは、同意することでも、折れることでもありません。
「あなたを理解しようとしています」という姿勢を示すことです。

この姿勢が、相手の不安を和らげ、
対話の扉を開きます。


まとめ

あなたの真剣さを、希望に変えるために

自己主張の強さは、
あなたが真剣に生き、働いてきた証であり、価値です。

そこに、

  • 傾聴
  • 言葉の順番
  • 相手の思考の余地

が加わると、人間関係は驚くほど変わります。

アサーションは、言い負かすための技術ではありません。
不安を乗り越え、人と人が前向きに前進するための、対話の技術です。

ぜひ前回の記事と読み比べながら、
「自分はどちらの傾向が強いだろう?」
と振り返ってみてください。

その気づきこそが、
生きづらさを感じていたあなたのコミュニケーションを変える、
最初の一歩の勇気になります。

【関連記事】
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自己主張が苦手で悩んでいる方はこちらの記事も参考にしてみてください。
👉 メンタルプログレス|アサーショントレーニング
https://mental-progress.com/assertion-training-2/

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

職場や生活で強い不安やストレスを抱えてお悩みのあなたを、企業経験30年(人事労務を担当した15年ではメンタル不調者への産業医と連携した対応経験が豊富)、メンタルクリニックでの患者さんへのカウンセリングによる支援、社外メンターとしての成長支援、SNS相談員として命と心、LGBTQなどの相談対応などの経験をベースにサポートいたします。

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