
「やらなきゃいけないのに、体が動かない。」
「挑戦したいのに、どうしても一歩が踏み出せない。」
そんな経験、ありませんか?
頭では分かっていても、心と体が動かないとき、
多くの人は「自分の意志が弱いせいだ」「真面目さが足りない」と自分を責めてしまいます。
でも、本当は――あなたの脳が“ブレーキ”をかけているだけなのです。
この記事では、社交不安や行動できない状態を「脳の仕組み」から優しく解き明かし、
あなたが本来持っている力を取り戻し、小さな一歩を踏み出すヒントをお届けします。
「やらなかった」わけではなく、脳がブレーキをかけただけ

不安を感じたとき、最初に動くのは脳の「扁桃体(へんとうたい)」という場所です。
扁桃体は、危険を察知して“身を守る”ための警報装置。
あなたが過去に「恥をかいた」「失敗して怒られた」経験を覚えていて、
似た状況が近づくと「また危ないかもしれない」と信号を出します。
その信号が脳全体に伝わると、
「闘争・逃走反応(Fight or Flight)」と呼ばれる防衛システムが作動します。
心臓がドキドキし、手足が冷たくなるのは、
まさに脳が「戦うか逃げるか」を選ぶ準備をしているからです。
あなたが動けなくなるのは、怠けているからではありません。
脳が「あなたを守るために、安全を最優先しているだけ」。
まずは、動けない自分を責めるのをやめて、
「今、脳が守ってくれているんだな」と、客観的に眺めてみてください。
脳の“ブレーキ”と“アクセル”――不安とドーパミンの関係

脳には、もうひとつ大切なシステムがあります。
それが「報酬系(ほうしゅうけい)」です。
報酬系は、目標を達成したときや、
「やってよかった」という体験をしたときに働く“やる気の回路”。
ここで分泌される「ドーパミン」は、行動を起こすアクセルのような存在です。
ところが、不安が強い状態では扁桃体(警報装置)の活動が優先され、
この“やる気のアクセル”が踏み込みにくくなります。
脳が「危険を避ける」モードに入ってしまい、
結果として、意欲のエンジンがかからなくなるのです。
つまり――
「やりたいのに動けない」のは、意志の問題ではなく、
脳の安全スイッチがONになっている状態。
でも、安心してください。
脳は経験によって学び、変わっていく力を持っています。
次の章では、“その変化の始まり”となる、あるサラリーマンの例をお話しします。
「恥の記憶」と、もう一度動き出すきっかけ

彼は数か月前、社内プレゼンで大きな失敗をしてしまいました。
スライドが止まり、言葉が出ず、
上司や同僚の視線が一斉に突き刺さる・・・
顔が熱くなり、手が震え、頭が真っ白になってしまいました。
何とか話し終えたあと、
恥ずかしさと情けなさで胸が苦しくなっていました
「もう二度と、あんな思いはしたくない」と強く思い、
どうしたらみんなの前で話さなくて済むか、そんなことばかり考えるようになりました。
それからの彼は、会議で発言するのを避けるようになり、
必要最低限の仕事だけをこなすように消極的になっていったのです。
周囲からは「真面目で慎重」と言われたが、
心の中では「また失敗したらどうしよう」と怯えていた。
そんなある日、彼の後輩が同じようにプレゼンで失敗して落ち込んでいました。
見ていられなくなった彼は、思わずこう言ったのです。
「大丈夫、俺も前にやらかしたことあるからさ。」
それは、自然に出た一言でした。
けれど、彼は自分の中の何かが少し軽くなったのを感じていました。
“あの失敗を話しても、誰も自分を責めない。”
そう感じたとき、胸の奥がほんのり温かくなった。
ダメな自分をさらけ出したことで、
どこかで「もう隠さなくていい」と思えたのかもしれなません。
そして同時に――
「部下に、ダメな自分でも立ち直れる姿を見せなきゃ」
そんな思いが、静かに灯ったのです。
小さな行動が“報酬”に変わる瞬間

翌日、彼は小さな挑戦をしました。
朝のミーティングで、一言だけ意見を言ってみたのです。
声は震えました。
けれど、誰も笑いませんでした。
むしろ、上司が「いい視点だな」と頷いてくれました。
その瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
“やってみてよかった”――それが脳の報酬系のサインです。
ドーパミンが放たれ、扁桃体の警報が少し静まっていく。
「大丈夫だった」という小さな成功体験です。
この“安心の経験”を重ねるうちに、
脳は次第に学んでいきます。
「不安でも、行動したら安心できた」
「挑戦したあとに、ちゃんと報酬(達成感や承認)がある」
そうやって、ブレーキばかりだった脳が、
少しずつアクセルを踏む練習を思い出していくのです。
気づけば、彼は以前よりも生き生きとしていました。
不安は完全に消えたわけではありません。
けれど、その不安を“準備のサイン”として使えるようになっていたのです。
まとめ:不安を味方に変える、あなたの脳の力
「行動できない自分」を責める必要はありません。
それは、脳があなたを必死で守っている証拠です。
けれど、あなたの脳は「学ぶ力」を持っています。
小さな一歩を踏み出す。
「大丈夫だった」という経験(報酬)を受け取る。
その繰り返しが、脳に新しい回路を作ります。
不安を「ブレーキ」から、「行動のための準備サイン」へと変えていくのです。
この記事を読んで、「そうか」と少しでも思えたなら、
それがもう、変化の始まりです。
まずは、とても小さな「やってみよう」で構いません。
例えば、
- 同僚に「おはようございます」に加えて「いい天気ですね」と一言添えてみる。
- 会議で発言はしなくても、誰かの意見に深く頷いてみる。
- 今日のタスクが一つ終わったら、自分に「よくやった」と声をかける。
そんな、誰にも気づかれないような小さな行動が、
あなたの脳の“アクセル”を、優しく温め直してくれます。
あなたは、決して弱くありません。
あなたの脳が持つ「変わる力」を、信じてみてください。
👉 前回の記事はこちら:「なぜ真面目なサラリーマンほど、不安を抱えやすいのか」
メンタルプログレスは不安を克服して自分らしく強く生きようとするあなたを応援しています。
無料のお試しカウンセリングをご用意していますので、カウンセリングにご興味があれば、ぜひご活用ください。

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。



コメント