はじめに
夜になってもなかなか眠れない、夜中に何度も目が覚める、あるいは朝早くに起きてしまって眠りが浅い──そんなお悩みを抱えていませんか。
私がカウンセリングの現場でお会いする方の多くも、「入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒」のいずれかで苦しんでいます。眠れない日が続くと、心も体も疲れ切ってしまい、日中の活動にも影響してしまいますよね。
本記事の目的は、医療行為ではなく、科学的知見をわかりやすく紹介し、日常生活に活かすための情報提供 です。眠りに悩むあなたに少しでも安心を届けられたらと思い、まとめました。
入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒の違いと科学的背景

入眠困難(寝つけない)
- 【科学的背景】就寝時に交感神経が優位になり、脳が過度に覚醒している状態。扁桃体の働きが強まり、不安や考えごとが止まらないことが原因とされます。
- 【特徴】布団に入っても頭が冴えてしまう、眠れないことへの焦りでさらに目が覚めてしまう。
中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
- 【科学的背景】自律神経が不安定になり、夜中でも交感神経が優位に立つことで眠りが浅くなる。ストレスやアルコール摂取が影響することも多いです。
- 【特徴】深夜に目が覚めてしまい、再び眠るまでに時間がかかる。
早朝覚醒(予定より早く目が覚める)
- 【科学的背景】体内時計のリズムが前倒しになったり、加齢や抑うつ傾向との関連が報告されています。コルチゾール分泌の乱れも影響します。
- 【特徴】まだ眠っていたいのに、夜明け前に目が覚めてしまい、その後眠れない。
日中のストレスと睡眠の質の関係

私自身の経験から強く感じることがあります。
それは、「睡眠の質は日中の不安や緊張に反比例する」 ということです。
日中に強いストレスを抱えていると、交感神経が高ぶったままになり、夜になっても脳が休まらず、眠りが浅くなってしまいます。研究でも、日中のストレスが扁桃体を過活動にし、夜間の覚醒度を高めてしまうことが報告されています。
つまり、夜の睡眠を改善するためには、「日中の過ごし方」に目を向けることが大切なのです。
事例:40代の働く主婦の方
数年前、40代の働く主婦の方から「夜中に何度も目が覚めてしまう」という相談を受けました。責任感が強く、持病のある子どもの世話を一人で抱え込み、日中も眠気に襲われて運転に支障が出るほど疲弊されていました。
カウンセリングの中では、ストレスを整理し認知行動療法を取り入れましたが、すぐに改善にはつながりませんでした。しかし数ヶ月後、「子どもを施設に預けるようになって、子供の心配から解放されたら眠れるようになりました」とご報告をいただきました。
この経験からも、「環境要因が大きい場合、改善には時間がかかる。しかし認知の変容を根気強く続けることで、改善の可能性は高まる」と実感しました。だから、安定した睡眠を諦める必要はないと思うのです。
具体的な改善のヒント
入眠困難への工夫
- 就寝前のルーティンを決めて、脳に「眠る合図」を送る
- スマホやPCの使用を寝る1時間前に控える
- 「眠れなかったらどうしよう」という思考を、「横になって休めるだけでも回復になる」と柔らかく捉え直す
中途覚醒への工夫
- 夜中に目覚めても時計を見ない
- 再入眠を助けるために、深呼吸や軽いストレッチを取り入れる
- 「眠れない自分を責めない」ことが大切
早朝覚醒への工夫
- 遮光カーテンで朝の光を調整する
- 起床後はあえて光を浴び、軽い運動で体内時計をリセット
- 日中に活動と休息のリズムをつくることで、夜の眠りを深める
不眠症に特化した認知行動療法(CBT-I)の紹介

不眠症に特化した認知行動療法は、CBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia) と呼ばれています。世界的にも「不眠改善の第一選択」とされ、薬に頼らずに眠りを整える方法として注目されています。
CBT-Iには、次のような実践的な方法があります:
- 刺激制御法:ベッドは「眠るときだけ」使い、眠れないときはいったん起きる
- 睡眠制限法:寝床にいる時間を実際の睡眠時間に合わせ、徐々に睡眠リズムを整える
- 認知の修正:「眠れないと翌日が台無しになる」→「横になって休むだけでも脳はある程度回復する」と考え方を変える
- リラクゼーション法:寝る前に呼吸法やストレッチで交感神経を落ち着ける
これらは少しずつの積み重ねが大切です。「眠りを取り戻す力は自分の中にある」と信じて、焦らず取り組むことが効果につながります。
まとめと読者へのメッセージ
入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒──どれもつらく、心と体を疲れさせるものです。しかし、睡眠は「心の安定の土台」です。
夜の工夫だけでなく、日中の不安や緊張を和らげることが、根本的な改善への道です。
もし今、眠れずに苦しんでいるなら、どうか「改善できる余地はある」と信じてみてください。
そして、もし強い不眠や生活に大きな支障がある場合には、ためらわず医療機関へ相談してください。一人で抱え込む必要はありません。
あなたの眠りが少しずつでも深まり、安心して過ごせる日々が戻ってきますように。
睡眠に関する記事は以下にもありますので、是非お読みくださいね!

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。
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