はじめに
私たちは、日常の中で意識せずに「心を守る仕組み=防衛機制」を使っています。
防衛機制は誰にでもある自然な反応ですが、その種類によっては問題を悪化させたり、人間関係をこじらせてしまうこともあります。
今回は、心理学者ジョージ・ヴァイアントが整理した「防衛機制の分類」をベースに、自分のクセをチェックしながら、不安や緊張をどう扱えるかを一緒に考えていきましょう。
1. 防衛機制の変遷
「防衛機制」と聞くと少し難しく感じるかもしれません。
これは、私たちが日々の生活で感じる「不安」や「ストレス」から、無意識のうちに自分の心をどう守っているかを表す心理学の考え方です。
この概念の基礎を築いたのは、精神分析の祖であるジークムント・フロイトです。彼は「抑圧」という概念を提唱し、受け入れがたい感情や記憶を心の奥底に押し込める働きを説明しました。
その後、フロイトの娘アンナ・フロイトが、この考えをさらに発展させ、様々な防衛機制を体系的に整理しました。私たちがよく耳にする「合理化」や「投影」なども、彼女の研究によって広く知られるようになりました。
さらにハーバード大学の精神科医ジョージ・ヴァイアントは、これらの防衛機制を「心の成熟度」という観点から分かりやすく分類しました。
2. ジョージ・ヴァイアントによる防衛機制の3つの分類

🟥 未熟な防衛(Immature Defense)
- 現実を歪めて自分を守る
- 短期的には楽になるが、人間関係や成長を妨げやすい
🟧 神経症的防衛(Neurotic Defense)
- 不安を和らげるために感情を抑え込んだり、理由づけを行う
- 社会生活は送れるが、本人の内面には葛藤が残りやすい
🟩 成熟した防衛(Mature Defense)
- 現実を受け入れつつ、前向きに気持ちを整理・変換する
- 心の安定や人間関係の良好さにつながる
3. 自分のよく使う防衛機制をチェックしてみよう

受け入れ難いネガティブな問題に直面したとき、あなたはどの防衛機制を使いがちでしょうか?
以下を参考にチェックしてみてください。
1)未熟な防衛
(ストレスを回避できるが、現実解決にはつながりにくい)
防衛機制 | 具体例 | 解説 |
---|---|---|
否認 | 「私はストレスなんて全然ない!」と強がる | 不安や問題を認めず、見ないふりをする |
投影 | 「あの人は私を嫌っているに違いない」 | 自分の不安や怒りを、相手の気持ちとして感じる |
受動攻撃 | 仕事をわざと遅らせて上司に迷惑をかける | 直接言えない不満を、行動で遠回しに表す |
空想 | 「宝くじが当たったら全部解決するのに…」 | 現実よりも想像の世界で安心感を得る |
特徴:一時的に気持ちは楽になるが、根本的な問題解決にはつながらない。
2)神経症的防衛
(一見合理的に見えるが、感情の抑圧や歪みが残る)
防衛機制 | 具体例 | 解説 |
---|---|---|
抑圧 | 「怒りは感じないようにしよう」と感情を封じ込める | 強い不安や怒りを意識に上げないようにする |
合理化 | 「転職したのはキャリアのため」と言うが、本当は職場の人間関係に耐えられなかった | 不安や失敗を、もっともらしい理由で説明する |
置き換え | 上司に怒られて、家で子どもに八つ当たりする | 本来の対象に向けられない感情を、別の対象にぶつける |
反動形成 | 苦手な同僚に、必要以上に優しく接する | 本当の感情とは逆の行動をとる |
特徴:社会生活には支障が出にくいが、ストレスが蓄積しやすい。
3)成熟した防衛
(ストレスを柔軟に受け止め、前向きに対応できる)
防衛機制 | 具体例 | 解説 |
---|---|---|
ユーモア | 失敗したとき「いや〜、やっちゃいましたね」と笑って乗り切る | ストレスを軽くし、場を和ませる |
昇華 | イライラしたとき運動や創作活動で発散する | 否定的な感情を、建設的な行動に変える |
利他性 | 落ち込んでいる同僚を励ますことで自分も元気になる | 他者を支援することで自己肯定感も高まる |
抑制 | 「今は感情を抑えて冷静に対応しよう」と判断する | 感情をなくすのではなく、状況に応じて調整する |
特徴:感情をうまく処理しながら、ストレスをポジティブな行動につなげる。
チェックしてみて、あなたはいかがでしたか?
「成熟した防衛機制」で処理できていましたか?
さらに詳しく知りたい方は、以下の外部リンクも参考にしてください:
4. 幸せになるための成熟した防衛機制

ヴァイアントの長期研究(ハーバード成人発達研究)では、成熟した防衛を多く使う人ほど、幸福度・健康度・人生満足度が高いことが示されています。
私も臨床の現場で、不安や緊張に苦しむ多くの方と接してきました。
その多くの方は、辛い状況への対処を「未熟な防衛」や「神経症的防衛」に頼りがちです。
これらを放置すると、問題の根本的な解決や克服に至らず、状況が改善しないままメンタル不調が深刻化してしまうことがあります。
メンタルプログレスのカウンセリングでは、クライエントさんの心に寄り添い、信頼関係を築いたうえで、現実に冷静に向き合い解決策を探すプロセスを進めていきます。
その過程で、自分の防衛機制の傾向を理解していただき、「成熟した防衛機制」で問題に対処する思考の練習を重ねていくことで、効果を実感していただいています。
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