──脳と心の仕組みから読み解く、感情との上手な付き合い方──

「あいつばかり評価されて…」
「なんで自分じゃなく、あいつが選ばれるんだ?」
こうした気持ちに心がザワついたこと、ありませんか?
それは「嫉妬」と呼ばれる、ごく自然な感情のひとつです。
でも、わかっていてもツラい。
放っておくと、自信を失ったり、人間関係を壊してしまうことも。
今回は、そんな嫉妬の正体を「脳」と「進化」の視点から解き明かし、
上手に付き合っていくためのヒントをお届けします。
1. 嫉妬とは何か?
嫉妬とは、自分が欲しいものを他人が手にしたときに生まれる「悔しさ」や「不公平感」を伴う感情です。
心理学では、自己評価や所属欲求が傷つけられたときに現れる「社会的な痛み」とも言われます。
よく似た感情に「羨望(うらやましい)」がありますが、
- 羨望は「自分もそうなりたい」という前向きな感情
- 嫉妬は「相手を引きずりおろしたい」と思ってしまうこともある破壊的な側面
このように、似ているようで本質は異なります。
2. なぜ嫉妬は存在するのか?
〜進化と生存の視点から〜
嫉妬は決して“ダメな感情”ではありません。
実は、私たちの祖先が群れで生き延びるために獲得してきた、大切な感情でもあります。
- 誰がリーダーか
- 誰が食べ物や配偶者を得たか
- 誰が仲間から評価されているか
こうした「他者との比較情報」は、生存に直結する重要なサイン。
だからこそ、他人の成功に敏感に反応し、「自分も頑張ろう」「奪われないようにしよう」と思わせる感情が、進化の過程で備わったのです。
3. 嫉妬が生まれる脳のメカニズム
嫉妬に関わる脳の領域には、以下のような場所があります。
- 前部帯状皮質(ACC):社会的な痛みや不公平感を処理する
- 扁桃体:他者への敵意や警戒心を高める
- 側坐核:報酬系と比較評価への反応に関与する
特にSNSなどの情報過多な現代では、他人の「成功」や「幸福」が見えすぎてしまい、
自分の現状と比較して嫉妬のスイッチが入りやすくなっています。
4. 嫉妬の予防法
〜脳に優しい習慣づくり〜
嫉妬を遠ざけるには、「感情の予防」がカギになります。
以下のような習慣が効果的です。
- 自分軸を持つ:「他人は他人、自分は自分」と価値観を明確に
- 日々の感謝を記録する:「足りない」より「すでにあるもの」に目を向ける
- SNSとの距離をとる:比較を生みにくい環境を意識してつくる
これらは、前頭前野を活性化させ、扁桃体の暴走(不安や怒り)を抑える神経的ブレーキとしても役立ちます。
5. 嫉妬してしまったときの対処法

どんなに気をつけていても、嫉妬は突然やってきます。
そんなときは、自分を責める前に、以下のステップを試してみてください。
① 感情に気づく
「いま、自分は嫉妬してるんだな」と自覚する
② 本当に欲しいものを探る
「なぜ、あの人がうらやましいのか?」→自分の本音を見つける
③ 行動に変える視点を持つ
「じゃあ、自分は何をすれば近づけるか?」と行動を考える
嫉妬は、あなたが「本当に望んでいること」に気づかせてくれる貴重なサインです。
6. 嫉妬は人間だけの感情?
〜動物と人間の比較から考える〜
実は、嫉妬の原型は他の哺乳類にも見られます。
たとえば、犬やチンパンジー、ボノボなど、社会性を持つ動物は、
飼い主や仲間が他者に関心を向けたとき、「割り込み」や「威嚇」「無視」など、やきもちに似た行動をとります。
心理学の実験では、犬がぬいぐるみに嫉妬するかのように、強く反応を示した例もあります。
しかし、「自分の評価」や「社会的地位」といった抽象的な比較を通じた嫉妬は、人間特有とされています。
つまり、人間の嫉妬は「自己イメージ」や「存在価値」と深く結びついており、
より複雑で、意味づけが加わった感情なのです。
▶ 嫉妬をどう捉えるかで、人生は変わる
この違いを知ることは、私たちが「嫉妬してしまう自分」を責めずに受け入れる手がかりになります。
嫉妬は、人間らしさの証であり、
“自分が本当に求めているもの”に気づくチャンスでもあります。
感情は、押し殺すものではなく「道しるべ」として活用することで、
私たちはもっと自由に、安心して生きていけるようになります。
【まとめ】

- 嫉妬は誰にでもある自然な感情
- 進化の過程で獲得された「比較」から生まれるシステム
- 脳では扁桃体・帯状皮質・側坐核などが関与
- 自分軸と感謝習慣で予防を
- 嫉妬は「自分の本音に気づくサイン」として活かそう
「嫉妬を感じてしまう自分はダメ」
そう思い込んでしまう人に、この記事が少しでも前向きに考える起点となれば嬉しいです。

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。
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