
職場や人間関係の中で、「ちゃんと評価されたい」「わかってもらえないと不安になる」そんな気持ちが強くなりすぎて、自分自身がしんどくなってしまう。このような「承認欲求の強さ」に悩む方は、決して少なくありません。
でも、安心してください。その悩みには、脳の仕組みや生育環境、発達特性といった“理由”があるのです。そして、ちゃんと整えていく方法もあるのです。
承認欲求が不安感情を生む仕組み──脳とこころの視点から
人は本能的に、「他者とのつながり」や「社会からの承認」によって安心を得るようにできています。これは進化の過程で築かれた、生存本能に基づくものです。
- 承認される=群れに受け入れられる=安心・安全
- 否定される=孤立する=危機・不安
この構造は、脳の中の「社会的報酬系」と呼ばれる回路に深く関係しています。とくに、ドーパミンが分泌されることで「褒められた・認められた」という快感が生まれ、その一方で、拒否や無視といった経験は、前帯状皮質という「痛み」を感じる脳の領域を刺激します。
つまり、社会的な否定は脳にとって“痛み”として処理されるのです。
なぜ、承認欲求が強くなってしまうのか?

愛着形成の影響(愛着障害)
子ども時代に、親や養育者との間に十分な安心感や信頼関係が築かれなかった場合、「自分には価値がない」「人に受け入れてもらえないかもしれない」という不安型の愛着スタイルが形成されやすくなります。
その結果、大人になってからも、常に他者からの承認や評価を求めてしまう傾向が強まります。
発達特性との関連(ASD・ADHD傾向)
空気を読むのが苦手/同じミスを繰り返してしまう/人間関係がうまくいかない──こうした経験が多いと、否定的な学習が積み重なり、強い自己否定や承認欲求に結びつくことがあります。
発達障害の特性を持つ方は、無自覚のまま否定される経験を繰り返しやすく、承認への欲求が強くなる傾向があります。
承認欲求との向き合い方──安心できる心の土台づくり

1. 承認欲求を「悪者」にしない
「人から認められたい」という気持ちは、誰もが持つ自然な感情です。やさしく気づいてあげることが第一歩です。
2. 自分自身を認める練習(自己承認)
- 朝、ちゃんと起きられた
- ミスしたけど、最後までやり切った
- 不安だったけど、行動に移せた
こうした日常の中の“できたこと”に目を向け、自分で自分を認める習慣を身につけることが大切です。
3. 安心できる対話と、認知行動療法の効果(カウンセリングの役割)

カウンセリングでは、信頼できる対話の中で、思い込みのクセに気づき、現実的で柔らかい考え方に置き換えていく「認知行動療法(CBT)」が効果的です。
また、カウンセラーとの関係性の中で分泌される「オキシトシン」により、ストレス軽減や不安の緩和といった生理的な効果も期待できます。
「あなたはひとりじゃない」──少しずつ、心を整えていこう

承認欲求が強すぎて苦しいと感じるのは、「わがまま」でも「甘え」でもありません。それは、これまでの経験と脳の働きが自然に生んだ反応です。そして、それは変えていけるものでもあります。
誰かに寄り添ってもらいながら、「本当の安心」を少しずつ積み重ねていくことで、自分で自分を大切に思えるようになります。
もし今、「このままじゃつらいな」と感じていたら、カウンセリングという選択肢を思い出してみてください。

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。
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