悲観的性格と楽観的性格の脳神経科学と進化論による考察――性格傾向をビジネスの視点で考える

目次

はじめに:人は「前向きになる」ために生きているわけではない

私たちは職場で、
「もっと前向きに考えよう」
「ネガティブにならないようにしよう」
と言われることがあります。

しかし、脳神経科学や進化論の視点から見ると、この前提そのものを一度見直す必要があります。

人間の脳は、前向きになるために進化してきたわけではありません。

脳が最優先してきたのは、

  • より良く生き延びること
  • 生存確率を高めること
  • 子孫を残し、次の世代につなぐこと

という、ごく根源的な目的です。

つまり、私たちの性格や思考のクセは、「幸せになるための仕組み」というより、生き残るための仕組みとして形づくられてきたものだと考えられます。

この前提に立つと、「悲観的性格」「楽観的性格」という言葉の意味は、まったく違って見えてきます。


生き延びるために必要だった2つの戦略

チャンスゲットと危険回避

進化の歴史の中で、人類は常に不確実な環境を生きてきました。
その中で集団として生き延びるためには、大きく分けて2つの戦略が必要でした。

一つは、チャンスを見つけて取りに行く戦略です。
新しい食料源を探す、未知の場所に踏み出す、人との関係を広げる。
こうした行動がなければ、環境の変化に適応できません。

もう一つは、危険を察知して回避する戦略です。
脅威の兆候に早く気づく、無理な状況から撤退する、最悪の事態を想定して備える。
これがなければ、生存そのものが脅かされます。

重要なのは、どちらが正しいかではなく、どちらも欠けてはいけなかったという点です。


本能を実現するために、脳と性格は多様化してきた

この2つの戦略を、すべての人が同じ強さで持つ必要はありませんでした。

むしろ集団の中に、

  • チャンスに目が向きやすい人
  • 危険に敏感な人

が自然に分かれて存在していた方が、集団全体としての生存確率は高まります

その結果、脳の反応の仕方や神経の働き、
そして「性格傾向」は、この役割分担を前提に多様化していったと考えられます。

性格の違いは欠陥ではなく、適応の結果なのです。


悲観的性格・楽観的性格を「戦略」として捉える

この進化的な視点に立つと、悲観的性格と楽観的性格は、次のように整理できます。

危険回避型(慎重型)の性格傾向

危険回避型の人は、まずリスクや問題点に注意が向きやすい傾向があります。

  • 小さな違和感に気づきやすい
  • 最悪の事態を想定する
  • 損失やトラブルを減らそうとする

「心配性」「考えすぎ」と見られがちですが、本質的には、集団を守るための危険検知と備えを担ってきた役割と考えることができます。


チャンスゲット型(行動型)の性格傾向

チャンスゲット型の人は、可能性やチャンスに注意が向きやすい傾向があります。

  • 行動のハードルが低い
  • 試しながら前に進める
  • 環境を広げ、選択肢を増やす

勢いがある、切り替えが早いと言われやすい一方で、本質的には、集団に新しい道をもたらす探索と拡張を担ってきた役割と考えられます。


「悲観的=ネガティブ・弱い」という誤解

職場では、前向きで行動が早い人が評価されやすい場面があります。
そのため、危険回避型(慎重型)の人ほど、「自分は仕事に向いていないのでは」と感じやすくなります。

しかし実際の仕事を思い浮かべてみると、安定して回っている現場には必ず、

  • ミスを防ぐために確認を重ねる人
  • トラブルの芽に早く気づく人
  • 最悪を想定して備えている人

がいます。

これは消極性ではありません。
仕事を止めないための重要なスキルです。

心理学の研究でも、
人は「得をする喜び」より「損をする痛み」を強く感じやすい(損失回避)ことが示されています。
つまり、危険回避的な反応は、人間として自然で合理的な側面を持っているのです。


ここで一度、自分の性格傾向を確認してみる

――自己性格チェック

ここまでの話を踏まえて、あなた自身がどちらの戦略を使いやすいかを確認してみましょう。

これは診断ではありません。
判断や行動の傾向を知るためのセルフチェックです。
直感で「より自分に近い」と感じる方を選んでください。

Q1 新しい役割を任されたとき
A:リスクや問題点が先に浮かぶ
B:成果や可能性が先に浮かぶ

Q2 行動前の準備
A:問題を洗い出してから動く
B:動きながら考える

Q3 失敗したとき
A:原因を丁寧に振り返る
B:切り替えて次に進む

Q4 決断のスピード
A:慎重で時間がかかる
B:比較的早い

Q5 不安を感じたとき
A:注意すべきサインだと思う
B:考えすぎても仕方ないと思う

Q6 周囲から言われやすい言葉
A:「慎重だね」「心配性だね」
B:「前向きだね」「楽観的だね」

Q7 計画が崩れたとき
A:一度立ち止まって整理する
B:その場で別案を考えて進む

Q8 将来を考えるとき
A:うまくいかない可能性も考える
B:なんとかなると感じることが多い

Q9 小さな違和感
A:人より早く気づく
B:あまり気にしない

Q10 大きな挑戦の前
A:失敗の影響を考えて慎重になる
B:チャンスだと感じてワクワクする

結果の目安
Aが多い:危険回避型(慎重型)
Bが多い:チャンスゲット型(行動型)
半々:状況に応じて切り替えやすいタイプ

どの結果にも良し悪しはありません。分かるのは、あなたの初期設定、つまり遺伝的な性格傾向です。


脳から見る2つのタイプ

どちらも正常で、適応的

危険回避型(慎重型)では、危険の兆候に注意が向きやすく、ミス防止やリスク察知に強みが出やすいと考えられます。

一方、チャンスゲット型(行動型)では、行動への心理的ハードルが低く、変化や挑戦への適応力が発揮されやすいと考えられます。

ここでも重要なのは、どちらも脳としては正常で進化的に意味があるいう点です。


仕事で起こりやすい「つまずき」

問題は性格ではなく、使い方

仕事でつまずきやすくなるのは、性格そのものが原因というより、同じ戦略を使い続けてしまうことです。

危険回避型(慎重型)は、考えすぎて動けなくなったり、決断が遅れてしまうことがあります。

チャンスゲット型(行動型)は、見積もりが甘くなったり、無理を重ねて突然限界が来ることがあります。

管理職でも一般社員でも構造は同じです。


性格を変えるのではなく、自分をマネジメントする

仕事で安定した成果を出している人は、性格を無理に変えているわけではありません。

自分の傾向を理解した上で、

  • 危険回避型は、考える時間に区切りをつける
  • チャンスゲット型は、立ち止まって確認する

といった調整を行っています。

これは性格を直すことではなく、自分自身をマネジメントすることです。


まとめ:性格傾向は欠点ではなく、人間が進化の中で獲得した機能

悲観的性格も、楽観的性格も、
どちらも「より良く生きる」「生き延びる」ために
進化の中で獲得された機能です。

仕事がつらいと感じるとき、それは性格が悪いからではありません。

その性格に合わない使い方を、自分にしているだけかもしれません。

まずは理解すること。
そこから、無理のない調整が始まります。

【関連記事】
ストレスによる「闘争・逃走反応」
生存本能が要求する、より良く生きるための行動原理

苦しい気持ちをありのまま受け止め、あなたの味方となり一緒に考えます。
お気軽にご相談ください。

よかったらシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

職場や生活で強い不安やストレスを抱えてお悩みのあなたを、企業経験30年(人事労務を担当した15年ではメンタル不調者への産業医と連携した対応経験が豊富)、メンタルクリニックでの患者さんへのカウンセリングによる支援、社外メンターとしての成長支援、SNS相談員として命と心、LGBTQなどの相談対応などの経験をベースにサポートいたします。

コメント

コメントする

目次