共働きサラリーマン夫婦は、なぜ話し合えなくなるのか
仕事を終えて帰宅し、夕食を済ませ、ようやく一息つける時間。
本当は、この時間こそ夫婦でゆっくり話したい。
そう思っていても、現実はなかなかそうはいきません。
共働きが当たり前になった今、多くのサラリーマン夫婦は、一日中、仕事と役割に追われています。
職場では成果を求められ、家庭では家事や育児、介護といった責任を担う。
その合間で、心の余裕を保つこと自体が難しくなってはいないでしょうか。
こうした状況の中で、夫婦の会話が少しずつ変わってきたと感じることはありませんか。
雑談が減り、必要な連絡だけになり、「話し合い」という言葉が、どこか重く感じられるようになる。

本来、夫婦関係は、お互いの気持ちや考えを尊重しながら話し合えるアサーティブな関係でありたいものです。
けれど、共働きのサラリーマン夫婦ほど、その関係を保つことが難しくなっているようにも感じられます。
性格の違いが以前より目立つようになったり、「言わなくても分かるはず」と思う場面が増えたり。
子どもの誕生や転勤といった生活の変化の中で、お互いに期待していた役割が、少しずつ噛み合わなくなってきたり。
さらに、慢性的な疲労やストレスが重なると、人は強く言ってしまったり、逆に何も言えなくなってしまうこともあります。
それは性格の問題というより、置かれている環境の影響なのかもしれません。
こうして、悪気がないまま、努力しているつもりのまま、夫婦は少しずつ「話し合いづらい関係」に近づいていきます。
夫婦のためのアサーションという考え方

ここで紹介したいのが、アサーションという考え方です。
アサーションという言葉を聞くと、「自己主張が強くなること」を想像する方もいるかもしれません。
けれど本来のアサーションは、もっと穏やかで、関係を大切にするものです。
共働きのサラリーマン夫婦にとって、私が大切だと考えているアサーションの目的は、次のようなものです。
夫婦がお互いの話に耳を傾けること。
その中で、それぞれの気持ちや考えを理解し合うこと。
どちらかが我慢し続けるのではなく、二人が平等に妥協しながら、その時点での「夫婦として最も納得できる答え」を探していくこと。
アサーションは、正しさを競うための技術ではありません。
相手を変えようとするものでもありません。
仕事の現場では、立場や考えの違う人と話し合いながら、現実的な落としどころを見つけることがあります。
夫婦のアサーションも、それとよく似ています。
感情を無視せず、でも感情に振り回されすぎず、
「この二人で、どう前に進むか」を考えるための対話。
それが、夫婦のためのアサーションです。
共働きサラリーマン夫婦にとって、アサーションは一つのヒントになる
共働きのサラリーマン夫婦は、実は、アサーションという考え方と相性が良い関係でもあります。
仕事の中では、立場や役割を意識しながら調整する力を、すでに身につけている人が多いからです。
一方で、家庭ではどうでしょうか。
「分かっているはず」「今さら言わなくても」
そんな前提が、いつの間にか増えてはいないでしょうか。
人生の節目で役割が変わったとき、その変化を言葉にしないまま進んでしまうことは、夫婦関係にとって小さくない負担になります。
アサーションは、そうしたズレに気づいたときの一つの考え方、選択肢です。
必ず使わなければならないものではありません。
ただ、「今の関係を、このままにしておいていいのだろうか」と感じたときに、立ち止まって考えるためのヒントになります。

※安全に関する大切な補足
もし今、関係が非常に苦しい状態にあり、話そうとすると強い恐怖を感じる、体がこわばる、相手の反応が怖くて言葉を選び続けてしまう。
そんな感覚がある場合は、無理にこの方法を試そうとしないでください。
それは「話し方」の問題ではなく、安全や尊厳が脅かされている可能性があります。
まずは、ご自身の安全と心のケアを最優先してください。
すれ違いの背景に合わせて、アサーションを使い直す

夫婦のすれ違いには、いくつかのパターンがあります。
もし思い当たるものがあれば、伝え方を少しだけ「調整(アサーション)」してみてもいいかもしれません。
「正論」でぶつかってしまうとき
どちらが正しいかを決めようとすると、会話は行き詰まりやすくなります。
そんなときは、「今の私はこう感じている」と、I(アイ)メッセージを主語にして話してみてください。
「言わなくても分かる」を卒業したいとき
「お風呂掃除やっておいて」ではなく、
「今日はすごく疲れていて腰が痛くて。代わりにお風呂を洗ってもらえると助かるな」
と、背景にある気持ちを言葉に戻してみます。
本音を話すのが怖くなっているとき
いきなり事実や問題を突きつけるのではなく、まずは自分の気持ちから話し始めてみてください。
希望は「命令」ではなく、あくまで「提案」として伝えることが大切です。
夫婦関係は、何度でも調整し直せる
夫婦関係がうまくいかなくなると、人はつい
「性格が合わなかったのかもしれない」
と考えがちです。
けれど、役割が変わり、余裕がなくなり、言葉を省略するようになっただけ、ということも少なくありません。
仕事では、環境が変われば調整を行います。
役割を見直し、話し合い、現実的な妥協点を探します。
夫婦関係も、本来は同じように、調整し続けていい関係です。

アサーションは、理想の夫婦像を押しつけるものではありません。
忙しい日常の中で、二人が無理なく前に進むための、一つの対話の姿勢です。
もし今、「うまく話せなくなっている」と感じているなら、
それは失敗ではありません。
関係を大切にしようとしている証拠です。
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